第17回まんがの日記念・4コマまんが大賞は2021年4月から9月7日(火)までの期間で応募を受け付け、本年は42都道府県から合わせて1,163人、1,550点の応募があり、高知出身まんが家の矢野徳さんと、くさか里樹さんが審査した結果、一般部門7点、ジュニア部門(小学生以下)6点、計13点と学校賞2校(南国市立大篠小学校・仁川学院小学校)が決まりました。
受賞作品と一次予選通過作品等は、12月3日から開催の「第17回まんがの日記念・4コマまんが大賞作品展」にて展示をする予定です。
【一般部門】
フクちゃん大賞「リモコン操作」
丸山健
すなおな絵がいいですね!リモコンで操作しているハズが、反対に操作されているのだという怖ろしさが、じんわり伝わって来ます。役割までも操作されているのだ。ほんわかした色彩なのがコワイよね。(矢野)
セリフなしで凄みが伝わることに脱帽。コントロールするのにもされるのにも慣れてしまう恐ろしさにゾゾっとしました。シンプルな線で達者な絵ですね。(くさか)
高知市長賞「自動化」
P.N. Kutsu
AIが人類を支配するといわれるシンギュラリティそのものですね。3コマ目のロボットの言葉が効果的!クツみがきをするのが仕事とは、インパクト満点(矢野)
「どんどん自動化されるね」の「どんどん」が「ここまできてたのか!」とびっくりさせるオチはお見事です。でも、絵そらごとでなく現実味を帯びていて、警鐘を鳴らす作品ですね。(くさか)
やなせ兎賞「海をキレイに!」
P.N. 矢光いるる
絵が上手!「ゴミつり大会」というシチュエーションを設定して、ゴミ問題にアプローチするという複雑な手法が成功!マイクロプラの山に吞みこまれそうな人物が効果的ですね。(矢野)
ゴミが釣れて苦戦していると思わせ、3コマ目に「ゴミ釣り」の垂れ幕を読めるようにするとか、大きいのが釣れたのに残念、と思ったら口から大量のマイクロプラゴミ。読み手を何度も驚かせる逆転逆転の作品。絵もすごくきれいです。(くさか)
よさこい賞「刺激が欲しいあなたに」
饗場真由紀
3分待つんだよをタイマーで表現。3コマ目でそぉ~~と間をとってメェェ~~ンとバクハツ的に出現!パシィと白刃取りをしているのもグー!まさに刺激満点の作品ですね。(矢野)
おもしろすぎます。タイトルを読んでもさっぱり予測できず、3コマ目までも全くわからず、4コマ目で驚き爆笑しました。ダジャレの爆発的活用の手本です。(くさか)
よさこい賞「 」(タイトル無し)
岩田悠奈
絵がすばらしい!リンゴが見事に熟していく秘密をかいま見た気分になるミステリアスな作品ですね。鳥が枝や葉に変化してゆく感じがうまく表現できています。バックが効果的!怖くて美しい異色作!(矢野)
誰も知らない秘密の世界を垣間見たような感覚。食鳥リンゴ?愛の姿?怖いけど美しい、見入ってしまう作品ですね。(くさか)
よさこい賞「広まる」
谷中初瑠
たった一人から、あっという間に広がってゆく、恐怖を見事に可視化していてすばらしい!4コマ目がドカンとトドメをさして来る。表現方法がユニークですね!(矢野)
点から面へ、そして世界へ、ベタとかけ網だけで見せる表現力がすごい。3コマ目まではまだ身近だったところから桁違いに大きくなる4コマ目が強烈です。(くさか)
よさこい賞「らくがき坊主」
P.N. はちのやすひこ
どこやらなつかしい画風が、表現の豊かさを見せてくれます。キャラクターが見事に描き分けられ、ムーヴマンが、まるで動画を観ている様に伝わって来る!自分の世界を持っているのもグーですね。色彩も見事!(矢野)
昔は一休さん、今ならバンクシー、とんちが効いていて読者や時代を選ばず楽しめますね。筆ぺんでしょうか。動きのあるデッサンが見事です。(くさか)
【ジュニア部門】
フクちゃん大賞「リンゴ」
那須絢乃
3コマ目でピタッと止まって足が出る!オチでネズミ君が顔を出して「おいし~」。中に入って食べていたのだと判る。ニッコリ笑った表情もグー!起・承・転・結がしっかり描かれていて見事です。構図も色彩も自然で美しいですね。(矢野)
丸いものが坂を転がると止まらないのが普通なのに、足が出てきて止まったらみんな「あっ」と驚きます。4コマ目の謎解きも楽しいです。(くさか)
やなせ兎賞「かぶる水」
金光叶夢
構図が面白いですね。造形的で現代アートの様で美しい。3コマ目でカサを変形させて、「もっとためよー」と得意げな表情。4コマ目でカサがこわれて目からザーザー大雨のような涙!雨の音が聴こえて来そうな作品ですね。(矢野)
お母さんに怒られるけどみんなに好かれるキャラクターですね。4コマとも同じ雲と雨と人物という構図を使っています。広げた傘のしたには雨を描かず、最後に一気にバシャー!見やすくてわかりやすくてすばらしいです。(くさか)
よさこい賞「がまん」
君島獅堂
私は動かないとくりかえし、ガマンを続けている。風や雨や雷などにあっても動かない大仏さんも4コマ目では、ついに体に筋が浮き出て、目玉はマッカ。猿やカエルや犬には困っているのだ。よく見ると猿はウンコ、犬はオシッコをしているではないか。大仏さんはエライ!(矢野)
大仏さんを見て、ずうっと動かないってどんな気持ちかなって考えたんですね。その想像力がすごいなって思います。最後は想像の中で大仏さんに挑戦してますね。これを読んだみんなは究極のがまんを体験できますね。(くさか)
よさこい賞「けしゴムくんのなやみ」
古田早紀
けしゴムせんもん理容店という、不思議な店があるのが、これから何が起こるのだろう?と思わせてグー!3コマ目でビビっているけしゴムくんの汗が描かれている。4コマ目で笑えるね。できればカガミを持たせるとよかったかもね。絵が上手!(矢野)
よく思いつきましたね。どこにでもあるけしゴムが髪の毛のことで悩んでいるなんて。そして消しかすを髪の毛にするなんて。どんなものでも漫画にできることを教えてもらいました。(くさか)
よさこい賞「カラスは知っている」
堀本星絆
カラスや鳩がよく描けている。ちゃんと調べて描く事の大切さが伝わって来ます。3コマ目の鳩とカラスはデフォルメされてグー!鳩の目の表情がいいですよね。4コマ目で笑わせて、カラスがアホーとトドメをさして、頭上にWINの文字!しっかりオチがつきましたね!(矢野)
みんなに好かれる鳩と嫌われ者のカラス。上から目線で自慢してくる鳩をカラスはたった一言で黙らせました。まるでイソップ童話のようです。ジュニアとは思えない哲学的な作品です。(くさか)
【総評】
今回も面白い作品が多く、嬉しく思いました。しかし選考を重ねる毎に苦しみが深くなるのだから複雑な気分でした。
面白く、多種多様な作品が、それぞれのすばらしさをアピールしてくるから甲乙つけがたくなるのです。入賞作品を見たら、その多様さに驚かれるでしょう。
第六次まで選考を重ね、各賞を決定しましたが、去っていった作品の数々がわすれられない。ごめんなさいとしばらくは言い続けそうです。いっその事、入賞三十点てな事にしたらなぞと思ったりするのでした。
ジュニアの作品にも基本をマスターしているものが沢山あって、今後、きっとすばらしい描き手になりそうな予感がして、とても楽しみです。次回もどんな作品が来るのか今からワクワクしています。
選考は小生にとって学びの場だとあらためて思いました。(矢野)
今年も新型コロナウイルスに関わるネタが多いだろうという予測は大きく外れました。バラエティーに富んだ個性的な作品ばかりで、どれも水準が高く、絞るのにとても苦労しました。芸術的な作品が少し減り、笑いを狙った作品が増えた印象です。ずば抜けた迫力の作品がない代わりに全体のレベルがすごく上がって横一線になってきている印象です。特に、ジュニアのレベルアップがすごい。教えられたものなのか、自然に学んだものなのか、起承転結の4コマ漫画の描き方をほとんどの子供達が身につけていて、絵や文字を丁寧に書くこともできていて、本当に驚きました。
たくさんの応募の中から入賞するのはわずかです。入賞できなかった中にも素晴らしい作品がたくさんたくさんありました。「あ、それはきっと自分のことだ」と思って自信を持ってくださいね。(くさか)